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『コードギアス 反逆のルルーシュ』 キャラの行動原理を考察 TV版と映画(総集編)3部作 『復活のルルーシュ』も少し

コードギアスシリーズ公式サイト

 『コードギアス 復活のルルーシュ』を観ました。それに先立ち、総集編3部作を観てTV版の内容を復習しました。やはりキャラの葛藤が観ていて面白いですねー。各キャラの行動原理、戦う動機、目標の推移を整理してみました。

 主要キャラの行動原理は途中で大きく変わりました。第二次東京決戦と、Cの世界でのルルーシュとシャルル・マリアンヌの間の論争が、その境目となっています。

Ⅰ. 序盤の各キャラの行動原理

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序盤の行動原理

1. ルルーシュの行動原理

 戦う動機はほぼブリタニアへの復讐のみで、わかりやすいです(その他の目標としては母の死の真相を知ることもありますが)。ブリタニアへの復讐のためには手段を選びません。日本がどうなるかなどには関心がなく、他人の意思を絶対遵守のギアスで捻じ曲げることに何の罪悪感も持ちません。ただ、ナナリーを危険な目に遭わせることはできないのと、スザクやユーフェミアへの情を持っており、彼らを切り捨てることができません。

 

ルルーシュにとってのナナリー

 「行く末は政治の道具か陰謀の餌食だ。作らねば。ナナリーだけでも幸せに過ごせる世界を」と序盤でルルーシュは言い、戦いの理由とします。ただ、これは無理のある理屈です。現状でナナリーもルルーシュも、一応は普通の日常生活を送れています。ルルーシュがゼロとして黒の騎士団を率いてブリタニアとの戦いを進めることで、かえってナナリーを危険な目に遭わせてしまっています。

 実際のところは、ブリタニアを潰したいという気持ちが先にあり、その後でナナリーの安全だけは確保しながら戦おうと決意したのではないかと思います。しかし、ルルーシュ自身は、ナナリーのために戦っているのだと自負しています。怨恨だけで戦うよりもその方が自分を正当化しやすいので、そう思い込んでいるのかもしれません(わざとかどうかは不明)。

 

ルルーシュにとってのスザク

 「計画通りに事が進めば、いずれ俺はナナリーのそばにいられなくなる。いざというとき、ナナリーを守ってくれる人間が必要だ。理想はその人間にとってナナリーが生きる目的になること スザクなら…」
 親友のスザクがブリタニア軍のパイロットであることが途中で判明します。ルルーシュはスザクとの友情を重んじており、敵だからといって殺すことができません。ナナリーの身の安全同様、スザクとの友情も、ブリタニアへの復讐のために犠牲にできるものではなかったのです。そのため、スザクをあれほど熱心に仲間に引き入れようとしたのでしょう。

 

ルルーシュにとってのユーフェミア

 ユーフェミアがナナリーのために、皇位継承権を捨てて行政特区日本を作ろうとしました。これを知ったルルーシュは、ブリタニアへの復讐のための戦いを一旦は放棄します。ルルーシュにとっては、ブリタニアへの復讐だけが大事なのではなく、ナナリーやユーフェミアも重要な存在であることが伺えます。

 

2. スザクの行動原理

 スザクの目標はブリタニアから日本の自治権を獲得することです。その行動原理は、とにかく「ルールを守る」ということ。つまり、現行の権力保持者であるブリタニアが定めた法律や命令を守らなければならないという信念のもとに行動します。死を命じられてもそれに従おうとするほど強い信念です。これは序盤では違和感のあるものですが、次第にその背景がわかってきます。過去の父親殺しがそのきっかけです。

 ルルーシュ「その方が楽だからな! 人に従っている方が!(←なぜか総集編ではカット)そうやって自分を封じ込めるのか! お前自身はどうなんだ!」スザク「違う!これは俺が決めた俺のルールだ!」
 このようにルルーシュがスザクに言いますが、まさにそのとおりなのでしょう。スザクは過去に、父親殺しという「悪い」やり方を実行してしまいました。そのことによってトラウマを負ったスザクは、もう自分の行動の結果に責任を負いたくなく、人が決めたルールを守りたがるようになったと考えると辻褄が合います。

 

スザクのトラウマの原因はややこしい

 「僕は知っているんだ。間違ったやり方で得た結果が何を残すか。行き場のない虚しさと後悔だけだって(TV本編19話のみ)。」とスザクは言います。しかし、スザクの父親殺しは、結局は早期終戦という良い結果を社会にもたらしました。こうしなければより悪い結果になっていただろうとのルルーシュの指摘をスザクは認めています。結局、間違ったやり方で得た結果の何が悪いのかと言うと、社会への影響ではなく、間違ったやり方を実行した後の自分の心が、罪悪感やトラウマによりダメージを負うことでしょう。

 ということで、スザクはルールを守ることで、(社会ではなく)自分を守っていると考えると辻褄が合います。ところで、スザクは他人にもこの信念を守るよう要求します。自分だけの信念と捉えるよりは、普遍的な倫理だと捉えるほうが得だからでしょう。「自分にはトラウマがあるから、自分だけこの信念を持っていればいい」などと考えるより、その方が自分で自分を責めずに済みますから。まあ個人的にはこういう序盤の姿勢は自己批判精神に欠けており、眺めていていい気がしません。ただ、ルルーシュユーフェミア暴走後に「俺を責めるな」などと言っており、スザクほどではありませんが、責められたくない気持ちを持っているようです。

 

ルルーシュとの対立でなく黒の騎士団との対立の方が明確

 ルルーシュの目標は単なるブリタニア壊滅ですが、スザクの目標は日本の自治権獲得です。目標が違いすぎるため、やり方が違うのは当然です。むしろ、黒の騎士団のやり方との対立の方が明確です。黒の騎士団の目標はスザクに似て、日本の独立ですが、やり方はテロや軍事行動です。真っ向からスザクのやり方に反しています。

 

Ⅱ. 終盤の各グループの行動原理

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終盤の行動原理

 第二次東京決戦と、Cの世界でのルルーシュとシャルル・マリアンヌの間の論争の後、キャラたちの戦いの目標がスケールアップし、世界の秩序の確立になります。

 ロイドの台詞によって、陣営の違いが明確に表されています。皇帝となったルルーシュ、スザク、特派(ロイド、セシル、ニーナ)たちは、「手段や結果に責任をとろうとしている顔ぶれ」です。「罪悪感≒自己批判精神の持ち主たち」といいかえることもできるでしょう。

1. 「手段や結果に責任をとろうとしている顔ぶれ」

 まずは罪悪感があるグループ。キャラの考え方が序盤と大きく変わっています。序盤では自分のために戦っていたのが、終盤では他人のために戦うようになりました。

 スザクは自分を正当化することがなくなっています。ルルーシュのかけた「生きろ」というギアスによって、徐々に自分と向き合えるようになったからかもしれません。

 ルルーシュは、個人的な怨恨に基づくブリタニアへの復讐などもはや眼中になく、人々の自主性を重んじる形での世界平和を目指します(これがゼロ・レクイエムです)。ルルーシュが初めに得た絶対遵守のギアスは、人々の自主性を奪うものでした。おそらくルルーシュはこれを反省し、人々の自主性を重んじるという、序盤と反対の行動原理を持つようになったのでしょう。そのきっかけは、枢木神社でスザクから言われた言葉だと思われます。ナナリーを救いたければ本物の正義の味方になってみろと(すぐにはそうならなかったが)。

 特派(ロイド、セシル、ニーナ)は、立場的には必ずしもルルーシュ側につく必然性がありません。しかし、フレイヤを開発し悲劇を招いた責任感から、フレイヤによる大量殺戮を厭わないシュナイゼルに対抗するルルーシュ側につくことにしたのだと思います。

 皇帝となったルルーシュ、スザク、特派(ロイド、セシル、ニーナ)に加え、ナナリーも思想的にはこのグループです。彼らは皆、人々の自主性を尊重します。ルルーシュが最後にナナリーにギアスを使う決心がついたのは、ナナリーも自分と同様に人々の自主性を保ったまま世界平和を目指していることを知ったからです。ギアスを使っても、ナナリーの意志を捻じ曲げたことにならないのです。

 

2. 罪悪感(自己批判精神)を持たない人たち

 もう一つのグループの人たちは、人々の意思を強引に変えようとします。ルルーシュの絶対遵守のギアスと同じ本質を持っていますね。フレイヤの恐怖によって人々を「調教」することで平和を確立しようとするシュナイゼルと、人々の意思を無視しラグナレクの接続によって自分の理想の世界=嘘のない世界を作ろうとするシャルル(とマリアンヌ)がこのグループです。

 終盤の黒の騎士団の行動原理はイマイチはっきりしません。だからシュナイゼルに利用されたのでしょうが。

 

おまけ『復活のルルーシュ

コードギアス 復活のルルーシュ 公式サイト

  • オールスターズ的な映画だったな。かつての敵味方がまとまって戦うカタルシス
  • シャーリー出番なさすぎだろ。生き返った意味が大してなかったなあ。
  • 敵キャラが多すぎ。
  • 本編で最後まで本音で話し合えなかったルルーシュとナナリー。この二人の会話があまりなくて残念。ルルーシュはC.C.を追いかける方が大事なのか……。そうか……。