化哲感想

アファンタジア(映像を想像できない) 2013入社(メーカー技術)

「過去より未来が大事」というのは同意できない 『映画ドキドキ!プリキュア マナ結婚!!?未来につなぐ希望のドレス』『コードギアス反逆のルルーシュ』『藤子・F・不二雄SF短編 流血鬼』『てつがくフレンズ』

   

映画ドキドキ!プリキュア マナ結婚!!?未来につなぐ希望のドレス!

未来、現在、過去 未来はそんなに大事か?

 この映画を5年ぶりくらいに見ました。最近見直したアニメ『コードギアス反逆のルルーシュ』に似ています。未来、現在、過去のどれを大事にするのかという対立が存在する点でです。この対立構造以外の部分に気を取られて他の部分には集中できなかったので、ほぼこれについて書きます。

okushishu.hatenablog.com

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プリキュア コードギアス 各勢力の志向とやり方

 プリキュアとその仲間(謎生物)たちは、思い出の世界に閉じ込めるなんてひどい!と言って敵のマシューらと争うわけですが、何がひどいのでしょうか?

 マナと暮らす謎生物のシャルル(コードギアスのキャラと同じ名前でややこしい)は、「未来には無限の可能性があるのに」と言って怒ります。しかし、私には響かない主張です。未来はどうなるかわかりません。なんとも抽象的で掴みどころがありません。そんな未来より、現在をどう過ごすかとか、過去に思いを馳せることのほうが好きです。それに、未来を重視し、未来のために頑張るという姿勢は、今苦しんでも良いという考えにつながるので危険です。まあこの映画では今苦しんでも良いなどとは言っていないのですが、私の志向が「未来<現在(、過去)」だと言いたいのです。

自主性はそんなに大事か?

 他のマシューのやり口の難点は、人の自主性を重んじていない点です。『コードギアス』のシャルルやシュナイゼルと同様です。これにはある程度同意できます。自分の意に反して住む環境を変えられたくはありません。とはいえ、当人の意に反して何かを強制することが常に悪いこととは言えないのも事実です。藤子・F・不二雄SF短編の『流血鬼』がその一例です。

 ざっくりあらすじを言うと、人間たちが吸血鬼に噛まれるのを恐れて逃げ惑っていたが、いざ噛まれて自分達が吸血鬼になってみると、人間だったときより快適で、人間より吸血鬼の方が良いとわかるというものです。少しずつ周りの人間たちが吸血鬼になっていき、逃げ続ける主人公に対して説得を試みます。人間よりも吸血鬼になったほうがいいのだと。しかし主人公は無理やり噛まれるまでそれを信じないのでした。

 これはなかなか説得力のある話だと思います。シャルルやシュナイゼルが作ろうとした世界も、いったん成立したら良い世界になったのかもしれません。良い世界にならなかった場合には、自分で世界を選択した場合に比べて大きな不満が残るという問題をはらんでいますが。

その他 2つの世界の行き来

 思い出の世界と現実世界のどちらを選ぶか?という葛藤が描かれます。どうやら思い出の世界というのは現実世界と対等な世界ではないようです。マシューが思い出の世界の出来事を操ることができ、さらに思い出の世界の中で過ごすマナ達はそのことを認識できるのです。こうなると、単に現実世界の中の快適な施設に引きこもるという状況と変わらなくなってきます。そりゃあ映画での展開どおり、いつまでも他人の作り物の世界の中でい続けたいとは思わないでしょう。現実世界も思い出の世界も、どちらも当人にとって現実の世界と感じられる(区別できない)のであれば、好きな方を選べばいいということになります(どちらの世界にいても世界は2つあるということを覚えていられないと、二度と戻ってこられませんが)。

 混乱させられるのは、思い出の世界の方には、マナの死んだおばあちゃんや飼い犬が登場し、現実世界での彼らの人格を引き継いで話ができるという設定です。そんなことができるのなら、思い出の世界には大きな価値がありますな。たまにそちらに行って雑談でもしたい。

 死んだおばあちゃんの立場はどうなっているのでしょう。死者には霊魂が残り、マシューの特殊能力によって生きている人と会話ができるということなのでしょうか。それとも、思い出の世界に登場するおばあちゃんはおばあちゃんの性格と記憶を完全に引き継いだ単なるAIであって(そんな物語もあるらしい→母、帰る~AIの遺言~ | NHK 土曜ドラマ)、おばあちゃん自身の自我は連続していないのでしょうか。気になります。前者だと肉体は滅びても人が死ぬことはないと言えます。キリスト教の世界観もたぶんこれ。後者なら、当人は死んでも他人は死なないということになります。

 『てつがくフレンズ』もそんな話だったなあ。というか、これを読んだせいでこういうことを考えてしまったのか。