化哲感想

アファンタジア(映像を想像できない) 2013入社(メーカー技術)

分析・測定結果の解釈で悩んだときのための本 『実験データを正しく扱うために』

分析・測定結果の解釈の悩み

  1. 分析結果が結構ばらついてしまう。測定回数を増やすのも大変だ。何回測定したらどのくらい正しくなるの?
  2. よく値の表記で「○○±△△」という形式(エラーバー付きの値)を見るが、あれの意味と使い方は?
  3. 2本の試薬の純度を測ったところ、値が近いが微妙に違うような気もする。有意な差かどうかってどうやって知るの?

などという疑問を楽に解消する本が、『実験データを正しく扱うために』です。

 この本を見つけるまで、普通の統計学の入門書*1を色々と見てみましたが、どうも冒頭に示したような疑問にすぐに結びつきませんでした。標準偏差には2通りあってどうのこうのとか、偏差値とはなんぞやとか、ナントカ分布がどうしたとか、ナントカ検定がどうしたとか、いろいろと書いてありますが、冒頭の分析・測定結果の疑問がいつ解消されるのかわからず、苛立ちました。数式を追いながらこういった本を読み込むのは時間がかかりますし、疑問の解消につながらないのなら、読むかいがありません(純粋に趣味として楽しむことはできますが)。

『実験データを正しく扱うために』は、まさに実験データを扱う人のための本なので、冒頭の疑問の解消に大いに役立ちました。

数式は多少天下り的に与えられていますが、目移りしないので好都合です。また、実験や測定をする人ならよく出くわすようなケースが例題として挙げられており、これを解くだけで最低限の知識が楽に身につきました。

 

疑問の解消

冒頭の1.と2.の疑問に対しては、p60にズバリ書いてあります(なぜか他の本では見つけられませんでした)。実験をN回行なったときの○%信頼度のエラーバーのプラスマイナスを、平均値に足せばいいわけです。

何回測定回数を増やすとエラーバーが小さくなるかが直感的にわかるグラフもp62に載っています。

冒頭の3.の疑問に対しては、p76~77にズバリ書いてあります。「2組のデータ群の平均値間の比較」を「t検定」で行えばよいわけです。

まあ、普通の統計学を勉強してもわかることだったのかもしれませんが、最短距離で疑問を解消できてよかったです。

その他

https://www.amed.go.jp/content/000034154.pdf

上記リンクのpdfファイル『記述統計量とグラフの書き方』も、データの扱いを学ぶのにかなり役立ちました。

また、分析・測定結果の解釈に関してもっと詳しく学べるのが、『分析・測定データの統計処理: 分析化学データの扱い方』です。実際の分析者が出くわす例が『実験データを正しく扱うために』と同様、豊富に載っています。ただ、数式の導入にかなり重きをおいており、私は着いていくだけで疲れてしまい、途中で挫折しました。『実験データを正しく扱うために』に載っていない知識も得られそうなので、いずれ読もうと思います。

 

一般的な統計学を学ぶ本

分析・測定結果の解釈に使う知識だけでなく、一般的な統計学を全体的に学ぶ場合の良さそうな本を挙げます。

学生時代には『 統計学入門 (基礎統計学Ⅰ)』で勉強しました。しかし、今ベラベラめくってみると、内容が全く記憶に残っていません。10年近くたった今ではもう読みなおす気になりません。学問的には良い本なのかもしれませんが、あまり楽には読めません。

一方、『まずはこの一冊から 意味がわかる統計学』は、楽に速く要点を理解できそうな本でした(まだ読んでいませんが)。

また、通し読みはできていませんが、以下の『マンガでわかる統計学』、『マンガでわかる統計学入門』も、統計学の要点を楽に学ぶには良さそうでした。

*1:学生時代に『基礎統計』という科目を履修しましたが、それを分析結果の解釈に活かせるほどの知識は身につきませんでした。単位を取れればそれでOKという勉強の姿勢だったからかもしれません。